鎌倉の緑地を守る
20代で自分の将来を考え直した時に、あらゆる環境問題に危機感を持っていた私は環境保全の道を進むことを決意し、東京環境工科専門学校で林業や持続可能な社会について学びました。その後、出産を経て東京から自然豊かな鎌倉に引っ越し、人々も自然に対して優しい気持ちを持っていることに触れ、幸せを感じました。仕事は障害者支援の施設を経て、出産してからずっと頭の片隅にあった児童養護施設で働くことができました。その傍らで、鎌倉で盛んであるビーチクリーン活動やパーマカルチャーの菜園教室に通い、家庭菜園や畑を始め、家の目の前の峯山(常盤山緑地)を手入れする活動にも参加させていただき、環境問題について話し合える仲間もでき、つながることの大切さを感じています。
私が毎日見ている鎌倉の緑は、市民が立ち上がって守ってきた歴史があります。1964年、鶴岡八幡宮の裏山が開発の危機にあった時に、1人の市民が開発の動きに気が付き、大佛次郎さんはじめ多くの文化人や市民が立ち上がり、緑を守る運動に広がっていきました。”御谷(おやつ)騒動”と言うそうです。鎌倉風致保存会が設立され、土地を買収し緑地保全に成功した日本で最初のナショナル・トラスト運動です。この運動が国を動かし、「古都保存法」の制定につながっているそうです。その後も、市民と行政と議会が一丸となって、広町・台峰・常盤山の三大緑地をはじめとした緑地を守り、現在、鎌倉市の33%が樹林地になっています。
しかしながら、山の木々が大きくなり日当たりが悪くなったり、台風で倒木や土砂崩れが起きたり、深刻な状況に不安を抱えながら生活している方たちもいます。これから特に気候変動による影響でますます異常気象が懸念されるため、早急な対応が求められます。産業としての林業がない鎌倉市において、ボランティアだけでなく、専門性を持った人材も活用して、協働した緑地の維持管理が必要です。
国の動きとしては、平成31年に法制化された森林環境税、森林環境贈与税により、毎年2000万円が国から市に譲与される見込みです。鎌倉市は、これを民有地の樹林の維持管理に充てる方針で、維持管理の補助金給付、災害対策のための手入れの仕方などについて、検討が進められています。
鎌倉の豊かな緑を将来に残していくために、私は、子どもたちが鎌倉の自然に親しみ、環境を守っていく大切さを学ぶ機会をたくさん作っていきたいと思います。「100年後も青い空、青い海」子どもたちに素晴らしい自然を残していきます。